オートバイ 紀行文

2007年7月 4日 (水)

乗鞍は・・・PART 2

 まずはテント設営、これが後輩からの借り物なので自分のとは勝手が違って中々やりずらい。
しかもこのテント、夏用で生地はペラペラ、入り口はファスナーではなく、紐で縛ると言う超古典的な安テントだった。 大丈夫だろうか? 本当に凍死するかもしれない。しかし、これしかないから、どうしようもないのである。なんとかテントを張り終えたら、今度は薪拾い。薪はキャンプ場の中のロッジの脇にうず高く積まれている物があり、これを使用させてもらった。ところが、この薪、ほとんど白樺なのだが、湿っているのか火の付け方が悪いのか、全く燃えない。色々と方法を変えて火をつけてみたのだが、いくらやっても燃えるのは新聞紙だけ。山の日暮れは早く、4 時を過ぎるともう辺りは薄暗くなってきた。 焦ってくる俺、がしかし焦れば、焦るほど火はつかない。あっという間に辺りは暗闇に包まれた。 不気味だ。さっきまでの牧歌的なウィンダムヒルはどこかに行ったのか。
 人里から3㌔ほど離れたキャンプ場は恐ろしく静かで恐い。今にも化け物が出てきそうだ。テントサイトに戻った俺は暗闇の中、ハル子のヘッドライトだけを頼りにもういちど焚き火に火を付けるべくチャレンジ、、、、、 しかし、結果はペケ。気温は急激に下がってゆく。だが、興奮しているのか俺は寒さを感じない。結局は焚き火は 諦め、早々とテントの中に入った。今までかかっていたハル子のエンジンを切る。
途端に静寂の世界だ。『 こ、こわい、、、』 おもわず口をついて出た言葉だ。『 幽霊出そうな感じ、、、 』
なぜか、異様な気配を感じる。林の奥から誰かが俺を見ている・・・ 気がした。急いでテントの中に逃げ込む。寝袋にもぐり込んだ俺は寒さを感じない、かなり、興奮しているようだ。
懐中電気であかりを確保した、あまりにも寂しく、心細いので独り言を言うのだが、テントの外から別の声が聞こえる気がして来る。よけいに恐くなる。寂し過ぎて、上空を飛んで行くジェット旅客機の音もとてもうらやましく思えた。5000㍍上空でのスチュワーデスさんの乗客へのお茶のサービスに思いを馳せる。とにかく、落ち着け・・・ この孤独から抜け出したい、恐さを忘れてしまいたかった。
缶ビールをバッグから引っ張りだした。アサヒのスーパードライ、缶には乗鞍の絵が描かれている。

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暗く寒かった、テント内、なんとこのテント、夏用のぺらぺらテントだった、すきま風ぴゅーぴゅーである。


ちくわをつまみに缶ビールを飲む。だが、全然酔う事が出来ない。酔っていてもいなければ、恐くてやっていられなかった。酔えないので、バッグの中から、バーボンウィスキーを出し、飲む。ぐびぐび飲む。
ようやく気分が落ち着いてきた。鼻歌を自然と歌う、酔ってきたようだ。だが、落ち着いてきたらば今度は
寒くなって来た。焚き火がないのだから、アルコールで体を温めなければならない。とにかく飲もう!!
幽霊の気配が恐い恐い。ふと、時計を見ると、9時くらいになっているはずなのに、まだ7時過ぎだ。ありえな〜い!!!!!  起きていると恐さが募るので寝る事にする。が、今度は寒さが酷くて、眠れない。8 時にはテントが凍ってしまっている。 寒くてどうしようもない、持ってきた服を重ね着し、靴下は3足を重ねて履く。それでも足先は冷たい。俺は早く朝が来てくれる事を祈り、午後9時眠りについた。 しかし、外でかさかさこそこそ、と落ち葉が立てる音にいちいちびくつき、何度も目が覚める。 眠りが浅いので、何度も何度も夢を見た。 朝がやってきた。あー、よかったー!! 朝だー!!! って       ・・ ・・ 夢も見た。目が覚めると、午前2時、、、  ものすごーく落ち込んだ。 恐いときって、なぜだろう。過去に見た恐怖映画の怪物達や幽霊の顔なんかが頭の中にやたらめったらと出て来る。 ジェイソンに ブギーマン、ドラキュラ伯爵にゾンビ、果てはお岩さん、まで国籍問わず、オールスターキャストでやってくる。 勘弁してくれ〜。
ほんとにこの夜は、お化け屋敷に行くよりも、肝試しよりも恐ろしい夜だった。

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キャンプ場での朝焼け、この明るさを待っていた。

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氷点下の空気の中、朝日が輝きだした。 寒さで震えが止まらず、ピンぼけである。


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ハル子もすっかり凍ってしまっている。白く見えるのが霜によって凍っている所。

朝がやってきた、本物の朝に心底、ほっとした。太陽がこんなにもありがたく、来たりし朝にこんなに歓喜したのは初めてだった。谷間の朝は空が白んでいるだけで太陽はなかなか、その姿を見せないが、十分だった。暗闇がいなくなるだけで。  きっと、古代の人間も朝に感謝していたんだろうな〜。 すごくよく分かる気がする。 あんまりにもうれしくて、テントを抜け出し、ひとり、『ぐーっもーにんぐ〜っ ミスター 徳光うー 』 などとウィッキーサンのまねをしながら、騒いでいた。 アホである。
 テントの外は全ての物が凍り付いていた。地面も凍っていて、霜柱が立っていて歩くとサクサクと音を立てる。 テントの中も凍りついていた。テント自体もそうだが、水筒の中の水が凍っているし、バーボンの残りも凍りつきそう、練り歯磨きも凍ってしまっていてチューブの中から出てこない。思いっきりチューブを押すと、ミリミリ〜ってきしみながらやっと出てきた。 冷たーい歯磨きだった。

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これが霜柱、地中の水分が凍って柱状になり、地面の土を持ち上げる。

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凍結防止用に出しっぱなしの水道、寒さでつららが出来ている。この水がとってもうまいのだ。


お湯を沸かし、コーヒーを入れる。乗鞍の水で入れたコーヒー、旨すぎるほど旨いコーヒーだ。
朝食を済ませ、片付けをすませると、ハル子のエンジンをかけてみる事にした。気温が低いのでかかりの悪さを心配したが、これがハンパじゃなかった。本当にかからない、何百回とキックしたが、ウンともスンとも、、、である。 足が吊りそうになった、、、 心優しい俺は最初、『 ハル子、寒かったな、悪かったな、』
などと優しく話しかけていたのだが、全然かからない、しまいには、完璧に頭に血が上り、『コノヤローっ!
主人がこんなに謝ってんのに、アンなんだあーオマエはあーっ!!!いい加減にしろーっ!!!! 』と怒鳴り タンクをひっぱたいた。 1時間ほどかかってようやく、エンジンがかかる。 キックのし過ぎで足は完全に筋肉痛だ。まともに歩けないほど。 エンジンはチョークを戻し、アイドリングさせようとすると、回転は徐々に下がり、すぐに止まってしまった。何度試しても同じである。 『 仕方ないなあ 』 とハル子は置いといて、荷物の最終整理。 片付けようとマグカップを手にした時、えっ? なんと凍っているのだ。 気温はまだ氷点下なのだ。 こんなに気温が低いとは、時刻は7時を過ぎているのに・・・ これではハル子のキャブレターも凍りついてエンジンが止まってしまうのもうなづけた。

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神聖な空気の中の神聖な一服。


 すっかりと準備を整える。目の前には朝日に染まる乗鞍岳の姿が神聖な時間を演出してくれた。僕も朝の一服を神聖に行う事とする。神聖な山の空気につつまれてたったひとりで満喫する大自然。昨夜の恐怖を忘れ、来てよかったあ と思うひとときであった。

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雄大でかつ、たおやかな乗鞍岳を仰ぎ見る。


一服を終え、一の瀬キャンプ場を後にした。俺はここで 一つの決断を下す。 ここまで来て乗鞍の頂上まで行かないなんて言うのは、あまりにももったいない。というわけで、閉鎖中のゲートへ。  15ほどでゲートに到着。ゲート脇の隙間から入るしかない。幅はかなり狭く慎重に ゆっくりとハル子を進ませる。 抜けた!!! ゲートの端から侵入成功。 あとは山頂をチャレンジするのみである。 よーし頑張るぞーレッツラゴーッ!! 

 かくして俺は愛車 ハル子とたった一人の頂上を目指し走り始めた。 ん〜快調 道はくねりながら、急峻に登ってゆく。たちまち乗鞍高原は眼下になった。 素晴らしい景観だ!! 澄みきった空、遠くに見える山々
空気も冷たく張りつめている。 『 うわあ−!!! 絶景かな 絶景かなー これを見ないで帰れというのが、土台、無理だよなー 』 俺は景色に圧倒され、とてつもなく Highな気分になった。 今、ここから見ている景色は俺しか見れないのだ。  ザマアミロー ガッハッハッはー。 夏はかなりの観光客でにぎあうのだろうが、今は誰もいない。  なおも俺はハル子を走らせた。ワインディングを舞い走るスピードも早さを増してきた。 が、とうとう 路面に雪が現れ始めた。日陰の道は雪はなくても凍結している。荷物が邪魔をして重心移動が思うように出来ない。慎重にマシンをライドする。最悪なのは、アイスバーンの上に積もった雪だ。とてつもなく滑る。何度も滑り、転倒しそうになったが、その度に、なんとかバランスをとってばたばたと 両足で地面を蹴って マシンを進ませた。
もっと高く!! 頂上まで登りきるぞーっ  コーナーではリアタイヤは空転し、フロントタイヤは外側へとずりずり滑る。とにかく慎重に そして根性でバランスを取る。少しでも前へ 前へ 進むんだ!

午前10時、頂上まで残り 3㌔、標高 約2200 ㍍の地点。雪のため走行不能。 チャレンジは断念となった。しかし 充分だ、頂上までは行けなかったが、実に有意義な旅だった。

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写真ではわかりずらいが、勾配はかなりきつく、これ以上の走行は不可能。

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まるでアルプス越えのような乗鞍への道。


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限界である、残念 無念。
『 乗鞍よ、今度来るときはきっと お前の頂上に立ってみせるぞ!!』  

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今回、この旅で俺は自然の恐さを思い知らされた。( 幽霊の怖さの 間違い? )
しかし、それと同時に自然の美しさ、素晴らしさをあらためて感じた。 それはいつしか、どんな形であれきっと人生の中で役に立つときが来るだろう。その日の為に俺はまた旅に出るだろう。 新たな旅立ちの日は近い。  などとキザな事はこの時は決して思わなかったわけで、ただひたすら、早く帰ってお風呂に入りたい!! あったまりたい〜ッ と いう 強い思いでいっぱいだった。
すっごーく寒い乗鞍岳をあとに、すみやかに、帰路についたのだ。 
 もう決してこの時期にはキャンプはしない!!! だって 寒いし、恐いし、あ〜 もう絶対にしない。やっぱ、温泉が一番じゃないかなあ〜 そう、温泉が一番。 これが 今回の旅の結論のようです。 出来れば、混浴がいい。  ( 甘い! 根性無し )

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彼方に見える雲海、頂上から眺めたかった。


かくして、マットシの旅は終わりを告げ、彼は来たときと同じコースをたどり、その日の夕刻、無事に帰宅出来た。部屋に帰った彼はすぐさま、熱いシャワーを浴び、疲労困憊した体を癒したのは言うまでもない。
元気を取り戻した彼は、コーヒーを沸かしながらいつもの鼻歌を歌う、乗鞍へ思いを馳せて・・・
                                            
んー 快調 快調 、、、DANG DANG とDANG DANG DA DANGと・・・ って風にね。

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我が愛車  HONDA XLX250R ハル子      < MD08 >         定価 358、000円 1983年4月発売
1985年5月2日購入
空冷4サイクル 単気筒SOHC ラジアル4バルブ (RFVC 搭載)
総排気量  249cc
最高出力  26ps/8500rpm
最大トルク 2,2kg-m/7500rpm
全長  2175mm
シート高     835mm
乾燥重量   118kg
燃料タンク容量  10L
車台番号   MD22-1002972
サスペンションストローク
F - 220mm
R - 205mm

=====特徴=====インプレッション
 世界初の真半球型燃焼室を持ったエンジンは低中速トルクが太く非常に扱いやすく、またパワフルである。しかし、高回転では今ひとつ伸びが足りない。ブレーキは前後 ドラム式でタッチも良くない。かかりにくく、ケッチンが多いエンジン始動も短所であろう。サスペンションは今風のレーシーさは持っていないが、ツーリングには最適。ゆったりとしたポジションも長距離で疲れにくく、まさにツーリングのための味わいのあるオートバイと言えるだろう。
 
====ツーリングデータ====
 昭和62年 11月20日〜21日
総合走行距離  503,65km    ハル子 距離数 出発時 40054,1km 到着時 40601,3km
ガソリン消費量 16,5L
平均燃費          31,5km/L

使用金額 写真代含み    9487円
内訳  
 防寒手袋 1480円
 単三電池4本160円
 煙草 CABIN MILD240円
 碓氷バイパス通行料100円
 ガソリン代   7,2L 1044円
 食品類 1393円
 缶ココア 100円
 TEL代 80円
 ガソリン代   9,3L 1300円
 TEL代 20円
 写真現像プリント代 3570円   

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いかがだったろうか? おはずかしい文章であるが、我が 青春の 1ページである。 なお、現在は乗鞍山頂へ向かうこの道は、自動車通行禁止になっており、自転車か、徒歩でしか登る事は出来ない。
この文を書いた翌年、乗鞍岳山頂までのツーリングに成功した事を報告しておこう。 また、通行禁止、進入禁止の部分に付いては、関係各位にこの場でお詫びをしたいと思います。 

  さて、今度は自転車で登ってみたいなあ〜 乗鞍、、、まってろよーっ!!  また、行くかんなーっ 


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2007年7月 3日 (火)

乗鞍は 嗚呼 寒 小寒 でおお恐い。

 オートバイでの紀行文、今回は、昭和62年 (1987年) 11月20日〜21日に長野県 乗鞍岳へ行ったときのお話。 寒い寒い冬の一人旅でした。    ではよかったら読んでみて下さい。


 今回の週末は、金曜から火曜まで学園祭のため休講となり、俺は5連休を得る事が出来た。天気も最高だ。こんなチャンスを逃す手はない。どこへ行くかは考える必要はなかった。 かつてからの憧れの地、
乗鞍へと向かう。 これが今回の週末の過ごし方だ。 と前から決めていたのだ。 だが乗鞍はちと遠い。
日帰りでは乗鞍を堪能する事は出来そうもない。そこで今回は菊池正敏史上初の山中孤独単独野宿を決行する事となった。 
俺は一週間前から準備をはじめた。 手元にあるテントはグランドシートがないため、急遽郡山の実家からテントと、ついでにコッヘルも送ってもらった。    父上様面倒かけます、、、ありがとう。
出発前日、オートバイの整備を終えた俺は荷造りを始めた。 大きなスポーツバッグ1つに テント、シュラフ、毛布、そしてビニールのスタッフ袋、ディパック、全ての物を準備するとこれだけの装備になる。かなりの量だ。さあ、明日は朝一番で出発だ。その晩は荷物の最終チェックをして、9時30分に早々とベッドにもぐり込んだ。


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明くる朝は午前6時に起きた。モーニングシャワーを浴びて、朝食にふりかけご飯と味噌汁を腹に入れ、そして愛車に荷物を積み上げ、、、とわたわちゃと動き回った。 出発は午前7時30分。コースは上の地図を参考にして欲しい。
 天気は晴天、本当に雲一つない抜けるような青空が広がっている。気温も徐々に上がってきているが、11月半ばの空気は冷たい。俺のお気に入りの必殺防寒ハンドルカバーを付ければ良いのだが、写真撮影する時に”様”にならないので、寒さが我慢出来なくなるまでリアシートの上のバッグの中に入れておく事にした。しかしながら、指先は冷たく、ついに軍手を買い、皮のグローブの上から着用する事にした。ちょうど、道路脇に ワークマン なる作業着屋を発見。店先にオートバイを止めた。 軍手を買うつもりで入った作業着屋だったはずだが、出てくる時はなぜか、1480 円也の白バイ隊員用防寒手袋もどきを手に付けていた。ここで俺は予定と結果の違いに少々悩む。(意志が弱い、、、)
 朝の渋滞で混雑する17号線を車をかき分けて走り抜け高崎へと抜ける。高崎へ入り17号線から18号線へと乗り換える。大型トラックが多いこの道は今までよりもペースがぐぐっと一気に落ちる。”すり抜け”の大家である俺はこのトラック達を次々にすり抜ける。 こういう時はすり抜けが出来ないと時間がもったいない、  、、、  ような気がする。
 あ〜気分がいい。天気はいいし、こんな時、俺はいつも鼻歌を歌うのです。やっぱ、ユーミンはいいなあ〜、特に DANG DANG とかが好き。なんかすごおくハッピーな気分になってくるんだ、これが・・・・・
DANG DANGを 3回程歌った頃、ちょうど 妙義山へとさしかかりました。

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妙義山とハル子、この角度から見るハル子がすごく好きなのです。

妙義山を過ぎ、碓氷バイパスを通過すると、そこはミーハーの天国 軽井沢だ。 言うまでもなく硬派の俺は脇道にそれる事なく、そのまま通過、、、  しかし国道脇のテニスコートに視線が走るのはなぜだろう、
いかんいかん まどわされてはいかあん! かくして若者はなんとなくムラムラする軽井沢を後に、小諸、上田へと向かうのである。
ただ漠然と存在する 浅間山を右に見て、小諸を通過。 前回松本へ行った時は 小諸から254号線へ入り、鹿教湯 ”かけゆ” 温泉、三才山トンネルを抜けて行ったのだが、この三才山トンネルは、なんと有料でたかが トンネルの分際で400円という大量なる金を徴収するという理不尽な行為に出た為、今回はこれを避けるべく少々遠回りだが、上田から143号線に入り 青木峠を駆け、四賀村、松本へとコースをとった。143号線は国道なわけだが、交通量は非常に少ない。路面はそれほど良くはない、一部ダートの所もありオンロード車は不利だが、青木峠付近のワインディングは結構楽しめる。 道はタイトコーナーの連続、路面はほどよく荒れている。この道はオフロード車の方が飛ばすには便利だ。軽い車体が功を奏しひらひらと舞うように走りまわれる。コーナーとコーナーとの間が非常に短いのでオンロード車はギアをほとんど変えられないが、単気筒エンジンを積んだオフロード車はギアをすばやく変える事により、速く、そしてとても楽しく走れた。
さて、青木峠で熱くなった体を一気に冷静にさせるかのようにやがて、北アルプスがその雄大な姿を目の前に どおーんと現わす。あまりの美しさ、雄大さに感動を覚えずにはいられず、オートバイを道端に止め、しばしの間、呆然・・・・・   とにかく高さがけた違い。雲の上の、白く雪をかぶった山々を見れば誰しも感銘を受けずにはいられまい。

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山の頂上、凍っています。 寒い!!

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青木峠 頂上からの眺望

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日本の屋根と呼ばれる、素晴らしい北アルプスの峰々。それにしても空は高いなあ〜。 

よだれが垂れてきそうになるほど呆然としていた俺は、この峰々の南端にある乗鞍へ向けて、再び走り始めた。 目指す乗鞍までは、もう遠くない。
松本市へと入り、ここまで来たついでに、前回見る事の出来なかった松本城へ立ち寄って見る事にする。
道がよくわからないが、まあ適当に走ればそのうちぶつかるだろう、と細い路地をぐるぐる廻るように走る。 あった!! 黒塗りの天守閣が、、、、、 ついに松本城を見た。 日本最古の国宝天守閣、さほど大きくはなく、地味なたたずまいの城ではあるが、どっしりと落ち着いた感が漂う。 お金と時間の関係上、お城の中には入れず、濠の外から見ているだけではあったが、んー満足。 落ち着き 落ち着き と言った感じだ。

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プカプカ カモと、どっしり松本城

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ハル子と松本城、うーむ 歴史の重みを感じる。

お濠にはカモなどが群れをなしてプカプカ浮いている。 (死んでいるのではなく、泳いでいるのだ) 孤独な俺はこのカモを相手に暫し休憩。 暇だからカモとお話でもしよう。さすが動物好き!! だが、会話の内容はいたってバカ、、、『カモ君達の生き甲斐ってなーに? あー があー ね なるほど。』 我ながら変な奴である。 周りの松本市民の白い視線をそんの少々、気にしながらこの場を後に、158号線を捜す。
 上高地と書かれた標識をやっと見つけて、それに従うが、いつの間にか2度と標識は姿を見せなくなり、かわりに19号線 塩尻 と書かれた標識が続いている。予定のコースを外れたような気がした俺はセブンイレブンに入り缶ココアなんぞを買い、道を聞く。案の定全く違う方向へ進んでいた。道を聞き終えた後は、ションベンなんぞをするがためにトイレを借りた。体内の保温材を放出してしまった俺は、身震いしながら松本駅前の繁華街へもどり、やっとこさの思いで158号線を見つける事が出来た。中央高速、松本インターの建設現場を右に見て、道は正面に見えるアルプスへと続いている。
 ダダダルーン とエンジンも快調。後は一本道だ。安曇村を抜ける頃にガソリンを補給。この時、スタンドのジジ様とババ様に乗鞍の事を聞いてみる事にした。すると、『 あに言ってんズらよ、もう道は閉鎖されてるズらよ。 キャンプ!!!???  とんでもねえっ!!山は、はあ雪降ってんのに今頃キャンプなんかしたら凍え死ぬわ 』  などと ショッキングな事を聞かされた。 『 ゲゲエー そりゃあないよー 』 ため息は出るわ、鼻水は出るわ、小便したくはなるわ、頭に来るわ、 と出ないのは金と涙 (もっとも 鼻水と涙は一緒だけど)
なんてこったい、 、 、  でもここまで来て諦めるわけにはいかない俺である。
 ここは一発!! 男にならニャイカンとばかりに鼻息も荒く、いざ乗鞍へゴーゴーゴーゴー 郷ひろみ!!! というわけで、ハイオクガソリン共石シェットGP-1を7,2リッター給油し満タンとなった我が愛車、ハル子 と腹が減って死にそうな俺は一足先に冬を迎えている乗鞍へ イケイケイケイケ 池袋。シツコイ ・・・

 安曇村を抜けると、右側にエメラルドグリーンの川が流れている。梓川である。道は坂道になり、梓川に沿うようにクネクネと曲がりくねっている。坂道にあえぎ、黒煙を吐いているダンプカーを追い越し禁止を無視して、次から次へがむしゃらに抜き続ける。ここのコーナーはほとんどが視界の開けたオープンコーナーで、俺の性格上、アクセルはワイドオープンなのだ。 ハル子ちゃん がんばって!!   ワインディングを駆け、トンネルを走り抜け、そしてまたワインディングを駆ける。ハル子ちゃんは多少息切れしているようだ。 そんな頃に俺は奈川渡 ” ナガワンド ” ダムに差し掛かった。 さて、煙草でも吸おうか・・・

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写真ではよく分からないが、実際に見ると、とてつもなくでかい奈川渡ダム。

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上の道路から奈川渡ダムの下を覗き込む、高さ100メートルはある、コワイ・・・

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日が西に傾き、梓湖が反射する、美しい光景だ。

奈川渡ダムで一休みしていると、一人のライダーと出会った。横浜から来たという彼は、温泉に宿を取っていると言う、やはりこの時期のキャンプはかなりヤバいらしかった。
道はここから、トンネルの連続になる、トンネルの入り口にある看板を見る、” 凍結注意 ” と記してあった。『 まさか 本当に凍結してないだろうなー 』と不安な気持ちでトンネルの中へ入る。どんどん進んで行くと急に路面が濡れてきた。俺はおもわず、体を硬直させた。もしも凍っていたら即 転倒、そして後続、もしくは対向してくるダンプカーに轢かれて ペッちゃんこになってしまう。スピードをぐーっと落とし、きわめて慎重に進む。幸いな事に路面は凍っていなかった。ほっとした、がもう一度気を引き締めて、ハル子を駆った。奈川渡トンネル、親子滝トンネル、前川渡トンネル の3つを抜けると、乗鞍への道を示す標識が目に入る。 通称 鈴蘭越え と呼ばれる、乗鞍高原へと続く道だ。 持参した地図のガイド欄にはかなりの悪路と書いてあったが、今は全て舗装されていて快適な道だ。 道とは裏腹に 通行止めなんて 殺生だよな、と 途方に暮れた。だがとりあえず 行ける所まで昇って行く事にした。 根性あるのみなのだ。

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冬季通行禁止のゲートの少し手前の日陰は雪がうっすりと積もっておりました。

道の脇には、こじんまりとペンションなんかが建っている。なんとなく裏磐梯を小さくしたようだった。
15分ほど走ると大きなゲートが前方に立ちふさがり、行く手を妨げていた。 仕方なく再度下へ降りる。
10分ほど下った道端に 乗鞍観光案内所があったので、訪ねてみた。
『 こんにちは、あのー 道はすべて 通行止めですか? 』 と切り出すと、ぶ然としたおばさんが『 そうですっ!!! 』 ときっぱり。 『 ほんじゃあ 一の瀬キャンプ場はどうなんですか? 』と聞くと、やはり 無愛想に『 やってません!! 』 『ゲートは閉まってますから!!!! 』 とまたしても きっぱり。 冷たーい対応に 腹を立てながらも裏腹に心細くなってきた。 少し下った所に1軒だけあるスーパーへ。 とりあえず、買い物でもしよう、ソーセージ、おにぎり、ちくわ、ビール、味噌汁の素、パン、マヨネーズ などを買い込み、レジのおばさんに一の瀬キャンプ場の事を聞いてみた。 『 入れる事は入れるよ、でも今頃野宿したんじゃあ、凍死しちゃうかもよ 』  もう一人のおばさんと、『 もし、本当に泊まるんだったら、一応、住所と名前、聞いておいた方が・・・ 明日の朝、冷たくなってたらねえ 』 と言うではないか。かなり 心細くなった。日も傾いてきた。 さらに心細くなってきた。 だが、俺も男だ!! 『 いやあ〜、大丈夫ですよ、一応は身分証明、持ってますから、、、 』 訳が分からぬ、返答をしつつも、( 自分の事、全然納得させられない答えだ ) 詳しく道を聞き、一の瀬キャンプ場へ急ぐ。 山間の夕方、日が沈むのはあっという間である。 明るいうちにテントを張り、食事の準備をしなきゃならない。 先程の無愛想おばんのいる 観光案内所の所を 左折して、道なりに進む。 5分ほどで駐車場に到着。ここからは本来、車両乗り入れは禁止なのだが・・・ すみません 環境庁さん。 ここは国立の キャンプ場なのだ。  駐車場から、舗装された遊歩道を進む。ここの景色は本当に素晴らしかった。小川が流れ、白樺、カラマツの林がひろがる。 天国のような景色である。 牧歌的で、ウィンダムヒルの音楽がピッタリの場所、すっかりと葉をおとした白樺林、冬枯れした芝生の地面、流れる小川、そしてここにたった一人。 贅沢な時間だ。 こんな素晴らしい景色の中を走っていたら、心細さも薄らいで行った。10分ほどで、野営場に到着した。 設備もよく、キャンプ場としては最高の場所だ。

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きわめて牧歌的で、美しい乗鞍高原、道はこの美しい林の中を走る。

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一の瀬キャンプ場入り口にて、 本当はバイクで入ってきてはいけないのだ。すみません。


ハル子を降りた俺は思わず嬉しくなってしまい、ひとりで大声を出しながら、はしゃぎまわっていた。 別に発作が起きた訳ではない。こんな素晴らしい場所をひとりじめ出来るなんてとっても嬉しくてはしゃいでしまったのだ。 俺は一瞬、この世界の中にたった一人なのかもしれない、そんなような錯覚に陥ってしまうような感じがした。 それだけきれいな景色だった。
 しかし、いつまでもはしゃいではいられなかった。やらねばならぬ事はたくさんあるのだ。

これから、乗鞍でのたった一人の長い夜が始まる・・・・・   今回はここまで。 続きは次回で。
しかし、あらためて、書き起こすと、文章が稚拙、、、 お恥ずかしい限りなのだが、まあ、20代前半なのであって、 若かりし僕を許して欲しい。
 

それでは、また次回、 たった一人の 真冬の乗鞍でお会いしましょう。 

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